『キリム ラグ』のある生活 -キリムの基礎知識と選び方- トライバルラグ、ギャッベとキリムの違いなどを解説

2021.07.23 2023.11.21

キリムラグのある生活

おしゃれなセレクトショップなどでインテリアに使われることも多いキリム。ラグの選択肢のひとつとして、キリムをチョイスする方が増えています。とはいえ、色々な柄やデザインがあって価格も様々。どんな物を選んだらいいかよくわからない、という声も耳にします。
そこで今回は、キリムを選ぶ時に知っておくと役に立つ基礎知識や、選び方のコツなどをご紹介します。
キリム選びにお役立てください♪

ボー・デコールオンラインとは?

1999年から「造り」「健康」「環境」をコンセプトに、永く使える上質な天然素材のインテリアを発信しているLOHASなインテリアショップ。オリジナルブランドの開発も手掛け、全国のインテリアショップ、デパートなどに提供しています。手仕事で造られた永く愛用できる天然素材インテリアを、少しでもお求めやすい価格で提案しています。

 

キリムとは、
トライバルラグ(ギャッベなど)キリムの違い

和室の畳に敷いたにキリム
キリムを壁に飾る

キリムは遊牧民が羊・山羊・ラクダなどの毛で織りあげる平織り(つづれ織り)の織り物。
古くからイラン・トルコやアフガニスタン周辺を中心に遊牧民が織りの技術を伝えてきた織物です。テント内の大地に床の役割としてパイルのある敷物であるトライバルラグ(ギャッベなど)を敷くのに対し、トライバルキリムは敷物としてというより万能的な使い方をされていました。

牧草を求めて移動する遊牧生活では、折りたたんで持ち運べるキリムは無くてはならない生活用具でした。穀物や塩をいれるバッグ、食卓の布、布団や衣類の収納袋、ブランケット、紐や帯、テントの中の間仕切り、礼拝用の敷物・・・暮らしの中で様々な用途に使われてきました。実用品であるとともに、装飾品でもあり伝統的な工芸品でもあったのです。

アナトリアキリムをはじめとする「キリム」の呼び方

トルコのキリムは「アナトリアキリム」といわれます。アナトリアは現在のトルコ共和国にほぼ重なる地域。古くから絨毯やキリムの産地として知られています。トルコでは「キリム」、イランでは「ギリム」、アフガニスタンでは「ゲリム」と発音します。
キリムの文化は広い地域に広がりました。ルーマニアやモルドバなどの東欧諸国、ウズベキスタンやトルクメニスタンなどの中央アジア、アフリカ大陸のモロッコでも伝統的にキリムが織られています。

キリムの織り手は遊牧民の女性

遊牧民の女性が糸を紡ぐようす
遊牧民の女性が糸を紡ぐようす

キリムを織るのは遊牧民の女性たち。母から娘へと伝統的な技法や文様が受け継がれてきました。キリムや絨毯は嫁入り道具として嫁ぎ先に持参する大切なアイテムでした。

織りこまれる文様には幸せな結婚や子孫繁栄、豊穣などの願いが込められています。身近にある自然や動物などをモチーフにした文様は部族や地域特有のものが数多くあります。織り手の想いが伝わってくるような文様はキリムの大きな魅力のひとつです。

現代では遊牧民だけではなく、産業として地方や都市の工房などでもキリムを製作しています。

キリムの素材

キリムの素材は羊、ヤギ、ラクダなど身近にいる動物の毛です。羊毛にはない白い色(※)はコットンを使います。一部にシルクや麻糸、化繊を少量使うこともあります。
※羊毛は古くなると白→ベージュ→薄い茶色に変色します

寒暖差のある高地に暮らす羊とヤギたち
寒暖差のある高地に暮らす羊とヤギたち
上質な毛を纏っている

キリムの主な素材。毎年1~2回毛を刈りとって何度も汚れを洗い流して糸にする。毛質にはかなりの違いがあり、寒暖差のある高地で育った羊は上質な毛を持つことが多い。上質な羊毛には40%もの脂分(ラノリン)が含まれている。

羊毛で織り上げられたアナトリアキリム
羊毛で織り上げられたアナトリアキリム

綿(コットン)

主に経糸(たていと)に使用。白を表現するときには緯糸(よこいと)にも使う。綿糸は強度がありバザールなどで入手しやすいことから町に近い産地や近代のものによく使われている。

経糸と緯糸 織物の組成

ヤギ

羊毛に混ぜて使うことが多い。肌に近い部分の毛は光沢があってきれい。水をよく弾くため、遊牧民のテントに使われる。外側の毛は丈夫なため、羊毛と混紡しラグの耳部分の補強や袋物を縫い合わせるのに使われる。

山羊の毛で織り上げられたゴートキリム
山羊の毛で織り上げられたゴートキリム

ラクダ

撥水性が高く汚れに強い。バクテリアの繁殖が少ないためソフレ(食卓布)に使われる。

ナンをこねる時に使用するキリム ソフレ
ナンをこねる時に使用するキリム ソフレ

キリムラグとトライバルラグ(ギャッベなど)との違い

平織りのキリムと絨毯との違いは毛足(パイル)の有無です。キリムは経糸と緯糸だけで構成される平らな織物。対して、絨毯は経糸と緯糸に結び糸(パイル糸)が加わり毛足のあるつくりです。

使用される用途もパイルにより厚みのあるトライバルラグ(ギャッベなど)は敷物として、キリムは多様な用途で使用されています。織りの素晴らしさから現代インテリアの世界ではキリムを敷物として愛用する方も多いです。

※平織りのキリムにも部分的に糸を足して毛足を作るデザインや、山羊の毛を起毛させてつくるキリムもあります。

ヴィンテージキリムとニューキリム

トルコのヴィンテージラグ「シャルキョイキリム」
トルコのオールドキリム
(シャルキョイキリム)

織られてから30年以上経過した上質なキリムは総称してヴィンテージキリムと呼ばれ、中でも80年以上たつものはアンティークキリム(コレクションピース)、50~80年のものはセミアンティーク、30~50年前に織られたものはオールドキリムと呼ばれます。30年未満のものはセミオールドと呼ばれることもあります。

100年以上前のキリムは遊牧民が生活用具として織ったもの。草木染めがほとんどで、羊毛の質も新しいものより上質といわれています。

ニューキリム ハグみじゅうたん リバーシブルイエニシリーズ
ニューキリム
ハグみじゅうたん® リバーシブルイエニシリーズ

表裏同じ柄のリバーシブルデザイン、上質ウールで織り上げた手織りのキリムラグです。

ニューキリムは産地にある工房でつくられる新作キリム。商業生産されるニューキリムは比較的安い価格のものも多くあります。

※ボー・デコールオンラインの表記について

ボー・デコール オンラインでは、つくられてから30年~80年が経過し、使い込まれた味わい深さとインテリア性を兼ね備えているものを「ヴィンテージキリム」、つくられてから80年以上が経過し、希少性があるものを「アンティークキリム」と表記しています。

キリムの織り方

キリムの織り方は経糸に緯糸を交互に通して上下に交差させしっかりと詰めていく「平織り(つづれ織り)」の技法。表面に見える色や模様は主に緯糸です。緯糸のかけ方で複雑な模様や繊細な表現ができるようになりました。
キリムの代表的な織り方をご紹介します。

平織り(つづれ織り)

つづれ織り(平織り)

基本の織り方。経糸に緯糸を交互に通して上からギュッと詰める。経糸は緯糸で完全に覆い隠されるため、表裏が同じ平らな布のような仕上がりになる。

均等平織り

曲線織り

経糸に緯糸をやわらかく入れていく織り方。緯糸も経糸も両方表面に出てくる。

ジジム織り

ジジム織り

平織りや均等平織りに異なる色の糸を追加して経糸に絡ませて模様を作る織り方。太い糸が使われることが多く、刺繍のように浮き上がって見える。

スリット織り

スリット織り

色を変えるときに使われる織り方。緯糸は同じ色を左右に行き来させて色を変えるときは端を経糸に巻き込む。縦に切れ目(スリット)ができる。

曲線織り

曲線織り

スリット織りに短い緯糸を追加して織り込みカーブを作る技法。花や葉、波模様などを表現するのに使われる。

スマック織り

ソマック

平織りの地織りに新たな緯糸で経糸1~2本を表から裏へと巻いていく技法。より丈夫に仕上がる。

キリムの種類とデザイン

生活用具としてのキリムの呼び名

遊牧民の生活用具としてつくられるキリムには色々な種類があります。

ソフレ

ヴィンテージラグ ソフレ OK25-AL0943

食卓用のキリム。細長いものをダイニングソフレといい、テントの中で車座に囲んで食事をする。
正方形のソフレは焼きあがったナンを包んで保管したり、小麦粉を練ったりするのに使う。汚れにくく、撥水性の高いラクダの毛や黒羊の毛が使われる。

マフラーシュ

箱形の寝具袋。赤ちゃんのゆりかごとしても使われる。畳むと小さなサイズになり持ち運びにも便利。

チューワル

穀物などを貯蔵する。ジジム織りなどのキリムで織られる縦長の袋。

ヘイベ

ヴィンテージのヘイベ

ラクダやロバの背にかけて使う袋。両側が収納袋になって振り分けられるようになっている。

ナマクダン

岩塩袋。ソルトバッグともいう。口が細くすぼまった形をしている。

ヤストック

細長い背もたれクッション。テントや室内でくつろぐ時に使われる。

染料について

染色したウールの糸

天然染料と化学染料

現在では一般にお目にかかる機会はほとんどありませんが100年以上前のアンティークキリムには天然染料が多く使われていました。深い色が残っているのは古い時代のもの。

天然染料には化学染料では表現できない輝きと深みがあります。化学染料は時が経つと褪色してぼやけたような感じに。経年変化によって味わいが増す天然染料を主に使用し、少しだけ化学染料を混ぜたオールドキリムも多いようです。そのため、厳密に使用染料を特定するのはかなり難しいのです。

化学染料は19世紀後半頃から使われるようになりました。確実に天然染料だけでつくられたと言えるのは150年以上前に織られたキリムだといわれています。ただし、アフガニスタンなど昔ながらの暮らしをする部族が住む地域では、最近まで天然染料を使っていたようです。

こんな風に書くと、「化学染料は良くないもの」という印象を持たれるかもしれませんが、鮮やかだった色が褪色して薄い色彩になるのもまた独特の魅力があります。いわゆる「シャビー」な雰囲気も感じられる化学染料を使用したキリムも楽しめるのではないでしょうか。

ニューキリムの中にはヴィンテージ感を出すために、薬を使って色を薄くする加工をしているものもあります。

アブラッシュは本物の証

糸を染色するとき、条件が同じでもその時々で染め上がりが違ったり、時とともにグラデーションのように色が変化したりすることがあります。キリムやパイル織りの絨毯に見られる美しい色むらです。これをアブラッシュと呼びます。アブラッシュは手作り感やデザインに深みが増すと同時に、手仕事でつくられたという「本物の証」でもあるのです。

主なサイズ

キリムにはトルコとイランそれぞれでサイズ展開と呼び名があります。主なサイズをご紹介します。

トルコのサイズ展開イランのサイズ展開
ヤストゥク100×60cmポシュティ90×50cm玄関マットやベッドサイドに
セッジャーデ170×100cmザロニム150×100cmソファ前やベッドサイドに
カルヨラ200×140cmド・ザール200×140cmソファ前やダイニングテーブルの下に
ケッレ300×200cmガーリィ300×200cmリビングやダイニング
ランナー50-80×200-400cmケナーレ50-80×200-400cm廊下やキッチン、リビングなどに

ヴィンテージキリム
選び方のポイント

寝室にキリムを敷いたイメージ

上質な羊毛が使われているキリムは表面に光沢があり、さわるとコシもあります。織り目が詰まった丁寧な仕上がりや希少性の高さは価格に反映されることも多いので、できることなら実物を見て選ぶのがベストです。

そうはいってもなかなかお店に足を運ぶこともできない今。専門店の通販サイトで選ぶなら、まずはなるべくたくさんのキリムを色々なショップで見てみてください。一番大切なのは「好き」と思えるかどうか。ボー・デコールでは、最初にいいと思った1枚を選ぶお客さまが多いです。ご自宅のインテリアに合うかはあまり悩まずに、色柄やデザインが本当に好きと思える1枚をとことん探してみてください。インスピレーションが大切です。

気になる1枚を見つけたら、オールドキリムやヴィンテージラグの場合は特にサイズや状態がしっかり明記されているかを確認してください。わからないことは何度でもお店に聞いてみましょう。その対応でも信頼できる販売店かどうかがわかります。

サイズや状態が詳しく明記されていると安心
サイズや状態が詳しく明記されていると安心

そしてお気に入りのキリムと出逢えたら、是非末永く楽しんでください。敷物としてだけでなく壁に飾ったり、ソファーに掛けたり、色々な楽しみ方があります。最初からクッションカバーに縫製されているキリムクッションも取り入れやすくおすすめです。ひとつずつ増やしていく楽しみもありますね。

ヴィンテージキリムを清潔にお使いいただくために

トライバルラグやキリムなどのヴィンテージラグは、屋外や土足の生活で使用されていたものが多いです。実際の暮らしの中で育まれた風合いの良さも魅力のひとつ。

ボー・デコールではすべてのヴィンテージラグ・キリムを、使い込まれた味わいを残しつつ、日本の住宅ですぐに使えるように、現地で2度洗浄、もしくは国内洗浄をしています。

安心してご使用ください。

現地の洗浄の様子
現地洗浄
国内洗浄の様子 ラグケア(ウール絨毯クリーニング)
国内洗浄

大好きなキリムがある空間は、毎日の暮らしに潤いをもたらしてくれるでしょう。

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ボー・デコールオンラインとは

1999年から「造り」「健康」「環境」をコンセプトに、全国の皆さまに永く使える上質な天然素材のインテリアを発信し続けているLOHASなインテリアショップです。オリジナルブランドの開発も手掛け、ウールラグ『ハグみじゅうたん®』リネンカーテン『Lif/Lin(リフリン)』リネンとコットンの雑貨『8à(ハチア)』を展開。全国のインテリアショップ、デパートなど258社に提供しているロハスインテリア商材の総合開発会社でもあります。オンラインショップでは、自社開発のオリジナル商品とコンセプトに添った厳選したアイテムをセレクト。手仕事で造られた永く愛用できる天然素材インテリアを、少しでもお求めやすい価格で提案しています。


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