キリム ~遊牧民の生活道具~
古い歴史をもつ伝統的な敷物
今もなお遊牧民の生活道具として使われている織物。キリムとはトルコ語で「羊・ヤギ・ラクダなどの毛で織られた平織り(つづれ織り)の織り物」のこと。暮らしの道具として、物入れや食卓布、ブランケットなど様々な用途に作られてきました。
牧草を求めて移動を続ける遊牧民の暮らしは常に身軽。運べるものが限定されるので生活道具にもこだわり、部族の誇りや美しさの表現を追及していったのでしょう。遊牧民の女性が何年もかけて手織りでつくるキリムは、アートのような自由な感性と豊かな表現に溢れています。
キリムの文様
キリムには様々な文様が織り込まれています。動物や自然をデフォルメした幾何学的なデザインが多く、子孫繁栄や魔除けなどの意味を持っています。

エリベリンデ
ELIBELINDE
女性のシンボル、豊穣、子孫繁栄

ユルドゥズ
YILDIZ
幸運の象徴、豊穣、魔除け

ミフラープ
MIHRAB
イスラム寺院(モスク)由来のアーチ型
礼拝用キリムのデザイン
凸模様をメッカの方向に向けて敷く

クルトアージュ
KURT AGZI
魔除け、邪視除け、狼から家畜を守る

ハヤットアージュ
HAYAT AGACI
永遠の命、繁栄祈願

メダリオン
MEDALLION
目を抽象化したダイヤ形や三角形
魔除けのモチーフ

エル バルマック
EL PARMAK
お守り、繁栄祈願、生命の誕生と幸せな結婚を守ってくれるシンボル

ボテ
BOTEH
古代ペルシャ由来のモチーフ
ペイズリーの原型ともいわれる
色々な場所に敷きたくなる キリムの魅力
部族や産地によって柄が異なり、個性あふれるデザインが特徴のキリム。まったく違うデザインなのに、組み合わせて使ってもうるさくなりません。むしろ色々な場所にどんどん敷きたくなる魅力があります。軽くて薄手のため敷物以外にもタペストリーなど、様々な場所で気軽に楽しめます。
キリムの産地と部族
キリムはトルコ中東部アナトリア地方、イランやアフガニスタンの遊牧民によって生み出されました。
オスマントルコ最盛期には北アフリカのモロッコや東欧ウクライナ、ハンガリー、チェコスロバキアへ領土の広がりとともにキリムの織りの文化も広まりました。産地や部族それぞれの文様、織りの技法は母から娘へと代々受け継がれ、表現を深めていったのです。
トルコ[アナトリア]
トルコのキリムは織られた村やキリムが集まってくる町の名前で呼ばれます。古くから他民族と交流があり、血族が薄まったために部族としてよりも産地としての特徴を発展させていったと考えられています。
コンヤ
アナトリアキリムの最高峰といわれるコンヤのキリム。多種多様で繊細な織り、質の良いウールが使われている。
カイセリ
比較的ざっくり織られたやさしい印象のキリムが多い。現在もたくさんのキリムをつくっている主要産地のひとつ。
シバス
かつてはイラン(ペルシャ)とイラクを繋ぐ要塞都市だった歴史の古い町。礼拝用のミフラープ文様、メダリオンなど特徴的なデザインのキリムが多い。

シャルキョイ
黒海からエーゲ海に通じる途中にある村。細い糸で緻密な織りが特徴。
赤や濃紺、白の組み合わせが多く、柄や色使いにどことなくヨーロッパらしさがある。
生命の樹に小鳥がとまっているデザインが有名。小鳥は天国に向かって飛び立つといわれている。

イラン[ペルシャ]
ペルシャ絨毯が有名なイランですが、地域や部族によって良質なキリムも多数織られています。イランのキリムは部族によって特徴があり、多くは部族名で呼ばれています。
アフシャール
イラン最大のトルコ系遊牧民族。14~15世紀に中央アジアからイラン北部、トルコ東部へと移ってきた。ボテ文様(ペイズリー)や幾何学模様が多い。
セネ
セネは絨毯の産地としても有名な街の名前。セネに住むクルド人が織るセネキリムは糸の紡ぎ、撚りの強さ、織りの技術など工芸美に優れている。連続した曲線を織りこむ繊細な技法は他の地域に住むクルド人の織物と比べても評価が高い。

カシュガイ
カシュガイ族は9世紀頃カスピ海の東海岸から移住してきたトルコ系部族。ギャッベの織り手としても知られる。ボーダーの上下に縞模様があるのが特徴。カシュガイ族の一部は現在も遊牧生活をしている。

カシュガイ族の織るギャッベはこちら
『アートギャッベR 公式サイト』
バクティアリ
ザグロス山脈の東麓の高原地帯に暮らす民族。スリットのない重ねつなぎ織りの技法が多く、キャンパス地のような重くて丈夫なキリムを織る。
バルーチ
アラブ系の遊牧民で、かつてはイランとアフガニスタンの国境付近の砂漠地帯に居住していた部族。アフガニスタン、トルクメニスタン、パキスタンにも多くのバルーチ族が暮らしている。
キリムは茜色、茶色などの重厚な色が多い。優れた絨毯の織り手としても有名。
キリムのお手入れ
掃除機掛け
2、3日に1回を目安に掃除機を掛けてください。ヘッドのブラシが高速回転する掃除機などはキリムを傷つける恐れがあります。ブラシの回転を止めるか、ブラシのないタイプのヘッドに交換してご使用ください。
陰干し
ウールの敷物は乾燥した状態を好みます。カラッと晴れた湿度の低い日に陰干しして風に当ててください。直射日光が当たる場合は短時間で済ませるようにしましょう。紫外線は色褪せの原因になります。
※ウールは湿気の多い日や濡れている時に特有のニオイがあります。乾くと気にならなくなりますので、こまめな換気や除湿をおすすめします。
キリムのクリーニング
キリムは天然染料、化学染料にかかわらず、水洗いすると色落ちや色移りすることがあります。専門店のクリーニングをおすすめいたします。
クリーニングする場合は、「天然ウールの絨毯」の洗浄経験があるお店にご相談いただくと安心です。5年に1回程度のクリーニングがおすすめです。
ボー・デコールのキリムについて
ボー・デコール オンラインショップで取り扱うヴィンテージ及びアンティークキリムは、買い付け後に現地の協業工場もしくは国内のグループ会社(キヨラカ株式会社/ラグケア)にて全商品を洗浄しています。




キリムの表記について
ボー・デコール オンラインショップでは、つくられてから25年~80年が経過し、使い込まれた味わい深さとインテリア性を兼ね備えているものを「ヴィンテージ」、つくられてから80年以上が経過し、希少性があるものを「アンティーク」と表記しています。