「おしゃれ・かわいいラグ」という表現におさまらないラグの世界観

2021.02.27 2022.04.24

「おしゃれ・かわいいラグ」という表現におさまらないラグの世界観

世の中には、実にたくさんのラグがあります。アート作品のように美しく、宝石のように高価なものから、日々の慎ましい暮らしの中で、大切に使い続けられている素朴で美しいもの、シンプルでおしゃれなものまで。でも、一生のうちで目にできるものはきっとほんのわずか。

これまで目にした中で特に印象に残っているものの多くはやはり、長く愛されてきたもの、丁寧に作られているものが多い気がします。人の手が織りなす美しい1枚は、暮らし豊かに温かく彩ってくれます。そんな記憶に残るラグをご紹介します。

ボー・デコールオンラインとは?

1999年から「造り」「健康」「環境」をコンセプトに、永く使える上質な天然素材のインテリアを発信しているLOHASなインテリアショップ。オリジナルブランドの開発も手掛け、全国のインテリアショップ、デパートなどに提供しています。手仕事で造られた永く愛用できる天然素材インテリアを、少しでもお求めやすい価格で提案しています。

 

100年もののオールドギャッベ

生成色の細長い形のラグの中央に、焦げ茶色の細い大きな木が1本描かれた1枚のラグ。聞けば100年を経たオールドギャッベとのこと。描かれているのは、ギャッベのモチーフとしてよく見られる「生命の木」だとか。

100年もののオールドギャッベ

「生命の木」のオールドギャッベ

現代の職人さんが作る見事なギャッベを何枚も見せて頂き、途方もない作業の細やかさと美しさに心打たれ、お腹いっぱいになった後、目にしたのがこの1枚。

シンプルでありながらそれまで見たどれとも異なる力強さを感じ、一瞬にして眼と心をわしづかみにされました。その時の衝撃は今でも強く印象に残っています。長く大切に使われ、残ってきたものだけが持つオーラとでも言いましょうか。その時初めて「ラグを育てる」という言葉の意味を肌で感じられた気がします。

新品のギャッベは、おしゃれですし色も鮮やかでとても美しい。
でもそのオールドギャッベは、長い間、日々の暮らしで使うことでくったりとした柔らかさになり、色合いも落ち着き、艶も出て、100年の歳月でしか醸し出すことのできない何とも言えない独特の魅力を纏っていました。

残念ながら売り物ではなく、オーナーさんが大切に飾っていたものだったのですが、もし売り物だとしても到底手が出ない価格だったでしょう。でもその時に、「これから新しいラグを買うのに、こんなふうに育っていくと思えたらとてもワクワクする!」とも思ったものです。

天然素材、天然染料を用い、手織りで丁寧に作られたものなら、きっとこのギャッベのように育てていけるはず。買う時は少し高いなぁと思ったとしても、大切に使えば次世代まで受け継ぐことができる。そう、自分で育てるマイヴィンテージが叶うのです。

モダンインテリアの名脇役ベニワレン

ベニワレンのラグを初めて見たのは、海外のインテリア雑誌の中。おしゃれだなぁと思う家の床には、たいてい白地に黒の菱形模様のラグが敷いてあり「一体どこのどういうラグなんだろう」と小さなキャプションに書かれた文字を追ったものです。

ベニオワレンとYチェア

フィンランドを代表するミッドセンチュリー期の巨匠、アルヴァ・アアルトのヘルシンキに残る自邸のリビングに敷かれていたのもベニワレンの大きな1枚。

暖炉を中心に配置されたアアルトの家具や照明たちをひきたて、さりげなく調和し、しっくりと馴染んでいました。北欧の家具とモロッコのラグ、その合わせの妙に感じ入り、ため息が出ました。他にもイームズ やコルビュジエなどミッドセンチュリー期のデザイナーたちが愛用していたとか。

そして現代のクリエーターたちにより、近年再び、世界中でブームとなっている人気ぶりです。ベニワレンは、もともとモロッコのベルベル人の女性たちが、婚礼などの祝い事のために作っていたものだとか。この地方では毛足の長い良質な羊毛が取れるため、それを染めずに織り上げていて、黒い毛糸で菱形などの幾何学模様をあしらっているのが特徴です。現代に残るヴィンテージの中には、丁寧に手織りで織られていた時代のものもあり、手織りならではの少し曲がったり歪んでいたりする柄模様が、機械織りでは得られない味わいとなっています。

モロッコのべニオワレン(ベニワレン)

一方で、機械織りで現代も変わらず作られている新品も多く、最近では地色を変えたり、幾何学模様に色を加えたものなども見かけます。人気の理由は、フカフカの触り心地、インテリアに合わせやすいモノトーンの色合い、シンプルで洗練されたデザインであることでしょうか。そして、大らかな柄模様が、モダンな家具の並ぶインテリア空間に絶妙な遊びや隙をもたらしてくれ、優しさや寛ぎを演出してくれるからかも知れません。あるようでなかなか見つからない唯一無二の存在感。モダンなインテリアにスッと調和し、緊張感を和らげ、温もりを与えてくれる。そんな懐深く、頼もしいラグです。

いつか手に入れたい、
イランのラグの圧倒的な存在感

仕事で訪問した、とある住宅でハッと目に飛び込んできたのが、紅色や紺色の地に細やかな模様がびっしり描かれた見事なラグ。床に敷いたもの、壁に飾られたものと数枚ありましたが、そのどれもがまるで絵画のような繊細な柄、美しい色合いで、思わず息をのみました。

「どちらのラグですか?」と伺ったところ、イランにある最高峰の工房で作られたものだとか。素人目にも、高い技術で丁寧に作られたのであろうことがわかりました。のちに、都内のショップで同じ工房で作られたラグを見る機会がありましたが、どれもため息の出る美しさ。

すべて現代のもので新品ですが、どこか懐かしくも感じられたのは、伝統的な模様や織り方をきちんと受け継いでいるからでしょうか。聞けばその工房では、廃れそうになった織り方を復元させ、伝統技術を守り、後世に残すための取り組みもされているのだとか。

もちろん、すべてが上質なウールなど天然素材で作られています。どのラグにも使われている紅い色をはじめ、奥行きのあるひと言では言い表せない深い色の糸で織り上げられた、美しい模様には吸い込まれそうな魅力がありました。華やかなのに不思議とどんな家具や空間にも合いそうで、格調高く、インテリアの主役となってくれそうです。まさに1枚で空間の質や空気まで変えてしまうラグ。いつの日かこんな素晴らしいラグを敷いた部屋で暮らしてみたい…と思ったものです。

キリムが教えてくれる天然染料の意味

ヴィンテージラグ アナトリアキリム OK35-FC1212116 イメージ

少し褪せた色合いがむしろ心地よく、インテリアにも合わせやすいヴィンテージのキリムは、クッションやスツールの張り地などでも見かけることがあります。毛足のない平織りの丈夫なキリムは、家具を頻繁に動かす場所などにも使え、ラフに楽しめます。

ある時、キリムにしては細やかな茶色と黄色の模様の美しい1枚に出会い、「いいなぁ」と眺めていました。するとショップの方が「このキリムには、化学染料で染めたヴィヴィッドな色も入っていたのですが、その部分の色だけが褪色して飛んでしまい、こんなに落ち着いた色合いになったのです」と。

ヴィンテージラグ SAVEH キリム OK22-J9058

なるほど、これぞ年月がもたらした効能。ヴィンテージならではの醍醐味だなと思いました。そして化学染料は年月と共に見事に色褪せてしまうけれど、天然の染料で染めた糸は、もちろん褪せてはいくものの美しいまま残るのだということを改めて思い知りました。ギャッベを取材した時も、化学染料が使われ始めた時代のちょっぴりポップで楽しげな色合いのものを見たことがあります。

当時はもっと鮮やかな色合いだったのでしょうが、程よく色が抜けて、それはそれで馴染んでいました。あの時のギャッベも、この先さらに化学染料の部分だけ特に褪色が続くのかしら?当時の人はそんなこと思いもしなかっただろうなぁ?と思いを巡らせました。

ラグを取材すると、天然の素材で天然の染料で…にこだわる丁寧な作り手さんに出会います。その理由が、何十年も先を見越して作っているのだという大切な理由が、よく理解できた気がしました。

イタリアの粋を感じた
コート生地のようなラグ

白とこげ茶のヘリンボーン柄や、白とグレーの千鳥格子柄…。まるで男性用の上質なコートの生地のようなシックなラグの数々に「なんてオシャレなの!」とため息をついてしまったほど。思わず、革張りのソファに合わせたらかっこいいだろうなぁとか、厚地の無地の布製のソファを合わせるのもいいかも?などと妄想が膨らみました。

聞けばハイブランドの洋服の生地や、ニュアンス色のホームリネンブランドを傘下に持つ、イタリアの老舗ファブリックメーカーが発表したラグとのこと。イタリアならではの洗練されたセンスに唸ったものです。残念ながらそのメーカーはその後、ラグの製造・販売を中止してしまったのですが、ヴィジュアルも含めてとびきりカッコよかったそのラグのカタログは、なかなか捨てられなくて長く手元に残していたのを記憶しています。

時折、イタリアの家具メーカーのショールームで同じように洋服の生地のような織りの素敵なラグを見かけますが、後にも先にもあれを超えるものにはなかなか出会えません。

丁寧な手仕事を気軽に入手できる
トライバルラグ

ヴィンテージラグ 1980年代 アフガンバルーチ族 ORn-2009014 イメージ

最近よく目にするのがヴィンテージのトライバルラグ。その名の通り、さまざまな民族による、それぞれのラグを総称してそう呼ぶのだとか。わからないなりにも何枚も見ているうちに、それぞれ色や柄に特徴があることが少しずつわかってきたりして楽しくなります。その民族が崇拝する動物であったり、ラッキーモチーフだったりが織り上げられていて、八百万の神を信仰する日本人にも相通じるものがあるな、などと思えたりもします。

年月を経たものはしなやかで、新品にはない落ち着いた風情があります。しかも手織りで丁寧に作られたものが多いのに、価格的に入手しやすいのも魅力。ある時、玄関に敷こうと試しに1枚購入してみました。使い込んだことがよくわかる短い毛足にクッタリとした柔らかな風合い。よく見ると、擦り切れた箇所を糸で修復した跡があったりしましたが、それも味かしら?と。もしかしたら、地元では古くて使われなくなったものなのかも知れないなぁとも思いながら、その上で納得できる価格、好みの色・柄だったので手に入れてみたのです。

ヴィンテージラグ ベルベル / モロッコ / 1990年代 / 58cm x 98cm / OR51-3012012 玄関イメージ

早速敷いてみたら、まるでずっと前からそこにあったかのように、空間に馴染んでしまったことにとても驚きました。これこそが長年大切に使われてきたものだけが持つ懐深さ、包容力なのかも知れません。

例えば寒い季節ならこっくりとした暖色系のものに、暖かい季節なら寒色系の色の入ったものにと季節ごとに変えて楽しむのもいいなと思いました。そして、手に入れたラグを作った民族の歴史、生活の様子などまで知ることが出来たなら、さらに愛着がわくのだろうなぁとも…。

昔、ギャッベの取材をした後に、たまたまTVで目にした、ギャッベの作り手の女性たちの暮らしぶりは、忘れがたいものでした。想像をはるかに超える途方もない手仕事に驚愕し、尊さ、有り難さを思い知りました。画面に映る壮大な風景に、「あんな雄大で美しい大自然の中で作られているからこそ、のびやかな絵柄になるのだなぁ」としみじみ思えたのです。こんなふうに、ラグをきっかけに知らなかった民族の、文化や暮らしを知ることも楽しい経験。トライバルラグはそのきっかけも与えてくれそうです。

トライバルラグはヴィンテージだけでなく、新品のものもたくさん販売されていますので「ヴィンテージが苦手」という方はそちらをぜひ。またトライバルラグではありませんが、昨今では、新品をヴィンテージ加工した、まるでヴィンテージのような風合いのラグもあり、こちらもおすすめです。

インテリアライター・エディター
鈴木奈代

雑誌やカタログ、ウェブ、書籍を中心に、インテリアや料理や食器などの暮らしにまつわるページを手がけ、取材・提案をする。雑誌『VERY』の大人気だった連載企画「日曜日の風景」の取材、及び2回にわたる書籍化も手がけた。

『日曜日の風景 何でもない週末の、何でもない一日』
『日曜日の風景 Part2』

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ボー・デコールオンラインとは

1999年から「造り」「健康」「環境」をコンセプトに、全国の皆さまに永く使える上質な天然素材のインテリアを発信し続けているLOHASなインテリアショップです。オリジナルブランドの開発も手掛け、ウールラグ『ハグみじゅうたん®』リネンカーテン『Lif/Lin(リフリン)』リネンとコットンの雑貨『8à(ハチア)』を展開。全国のインテリアショップ、デパートなど258社に提供しているロハスインテリア商材の総合開発会社でもあります。オンラインショップでは、自社開発のオリジナル商品とコンセプトに添った厳選したアイテムをセレクト。手仕事で造られた永く愛用できる天然素材インテリアを、少しでもお求めやすい価格で提案しています。


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