世界に1つだけ、手織り絨毯「ギャッベ」の魅力と選び方

2022.12.11 2022.12.13

世界に1つだけ、手織り絨毯「ギャッベ」の魅力と選び方

手織りの絨毯「ギャッベ」をご存じでしょうか。

ギャッベは、厳しい自然環境のなかで暮らす遊牧民が、生活の道具として手織りする絨毯(じゅうたん)のことで、近頃は日本の雑誌でも特集が組まれるなど、おしゃれなインテリアとして注目を集めています。

今回は、このギャッベについて、基礎知識から選び方のポイント、伝統的な柄の背景にあるストーリーまで、その魅力に迫ります。

「ギャッベ」の魅力

近頃、インテリアにこだわりのある方を中心に、人気が高まっている「ギャッベ」。とはいえ、まだまだご存じない方もいらっしゃることでしょう。まずは、「ギャッベ」の基礎情報を簡単に紹介しましょう。

ギャッベとは

「ギャッベ」とは、おもにイランの南西部のザグロス山脈一帯(ペルシャ地方)に住む遊牧民が手織りする絨毯のことです。「ギャッベ」は、ペルシア語で「ざっくりとした」という意味があります。

ギャッベを織る遊牧民の女性
カシュガイ族の女性が
ギャッベを織るようす

もともとは過酷な遊牧生活の中で快適に暮らすための生活道具として織られ、その手織りの技法も親から子へと代々受け継がれてきました。一本ずつ羊毛の糸を結び付けて織る手織り絨毯づくりはとても根気のいる仕事です。近年は織り手の数も少なくなっています。

そこで永年継承されてきた織りの文化を守るため、ギャッベを織るファールス州の手織りの技術が2010年にユネスコの無形文化遺産に登録されました。

遊牧民のテント生活の様子
宿営地の様子
テントの中にはギャッベやキリムが敷き詰められている

手結びで織り上げる手織り絨毯「ギャッベ」は、手仕事ならではのしっかりと目の詰まった丈夫な織りとナチュラルな風合いと素朴なデザインが魅力です。

家族や仲間、自然を大切にする民族が織り上げるギャッベには伝統的なモチーフがあり、家庭円満を願う「鹿」や健康や長寿を願う「生命の木」など、多彩な文様もその魅力のひとつです。織り手の女性たちはさまざまな思いをこめて絨毯で表現をしています。

黄色のギャッベ

1枚1枚がそれぞれ世界観を持ち、作り手の個性を楽しめる「世界に一つだけの表情をもつじゅうたん」です。

織り方・厚み

遊牧民の女性が糸を紡ぐ様子
カシュガイ族の女性が糸を紡ぐようす

厳しい自然環境で暮らす遊牧生活では、足元を温める絨毯が欠かせません。地面の固さや冷たさを感じさせないよう、しっかりとした厚みが出るようにつくります。1本ずつ糸を手結びで織り上げる「手織り」のため丈夫で、織地がしっかりと密に詰まり、絨毯の毛足が長く、ふかふかとしたやさしい踏み心地になっているのもギャッベの特徴です。

※ギャッベの厚みは1枚ずつ異なります(比較的薄く毛足を揃えたものもあります)

耐久性

100年前に織られたオールドギャッベ
100年前のオールドギャッベ
※非売品です

ギャッベは、寒暖差の激しい山地で快適に暮らすための生活道具の1つとして発展してきました。かつては、遊牧民の女性たちが嫁入り道具として持参し、何代にも渡って受け継がれていたほどです。その丈夫さにも定評があります。

なかには、何十年も時代を経たものもあり、そうしたヴィンテージのギャッベは、特に希少価値が高いものとなっています。

写真のギャッベは100年以上前のもの。ボー・デコールの初代選定人がイランで惚れ込み、譲り受けてきたものです。擦り切れている部分は一家の主が良く座る場所だったのでしょうか。多くの歴史が刻まれた希少な一枚です。

自然素材

寒暖差のある高地に暮らす羊とヤギたち

ギャッベの原料はウール。遊牧民たちは、自ら育てたヒツジの毛を原料として、ウールの糸を紡ぎ、草木で染色して、ギャッベを織っています。遊牧生活から生まれたギャッベの製作過程のすべては、自然の恵みから得たものです。絨毯の裏面を固めるような接着剤は使用しません。

ギャッベは、すべて天然素材からつくられているため、素足で歩いたり、ときには寝転がったりしても、安心な素材です。裸足でふかふかとした感触を楽しみたくなる絨毯です。

ギャッベやその他の絨毯の素材については、こちらも参考にしてください。

ラグの素材&種類を解説 ギャッベやモダン、ヴィンテージ、シャギー…何が違う? >>

ギャッベを選ぶポイント

水色のギャッベ

天然素材で織られたギャッベは、一年を通して快適に使用できます。毛足の長い絨毯は、冬の寒い季節にだけに敷くイメージがあるかもしれません。しかし、ギャッベの素材となる天然のウールは、繊維に空気を内包し、吸放湿性に優れているため、寒い時期にはあたたかく、暑い時期にはさらりとした使い心地に変わります。

季節の変化を気にせず使用でき、収納する手間が省けるのはうれしいですね。また、いつも目にするものだからこそ、部屋の雰囲気に合ったギャッベを選ぶことが大切です。

ギャッベを置きたいけれど、「自分の部屋にギャッベが似合うのかどうかわからない」と不安な方に向けて、ギャッベ選びのポイントについて、紹介します。

ギャッベが似合う部屋・インテリア

ギャッベがどんな部屋やインテリアと相性がよいのか、スタイリング例を紹介しましょう。

モダンでシンプルな部屋に個性をプラス

モダンなインテリアに青いアートギャッベ

シンプルですっきりとした部屋に、ギャッベの絨毯を敷くと、ギャッベの持つ天然素材の素朴さや彩りが際立ちます。例えば、モダンなインテリアにギャッベを組み合わせると、紋様のオリジナリティが際立ちます。ギャッベに織り込まれた、まっすぐな直線ではない手描きのような幾何学模様や自然の風景をそのままデザインとして織り込んだ紋様に、深い魅力を見出すことでしょう。

ウッディな部屋にあたたかな色合いをプラス

ウッディなお部屋に赤色のアートギャッベ

ウッディでナチュラルな部屋は、天然ウールを素材とするギャッベと相性がよく、どんなデザインのギャッベを置いても、自然となじみます。草木で染めたウールの持つやわらかな色合いは、家族が自然と集まりやすい落ち着いた空間を作るのに役立ちます。

ギャッベの柄と選び方

ギャッベの文様

ギャッベのデザインは、遊牧生活で目にする風景や自然にまつわるモチーフが織り込まれているのが大きな特徴です。作られる地域や部族によって、使われるモチーフや柄が異なるのも魅力です。また、同じデザインでも、「織り手」の感性によって、違った雰囲気に仕上がります。ギャッベを選ぶ際には、できれば実際に見たり、触ったりして、選ぶことをおすすめします。

ここでは、ギャッベ選びの参考となるよう、ギャッベの伝統的な模様と、そこに込められた意味を紹介します。

動物(ヒツジ、シカ、ラクダなど)

羊  子孫繁栄

子孫繁栄
鹿 家庭円満の象徴
鹿
家庭円満の象徴
ラクダ  富や成功の象徴
ラクダ
富や成功の象徴

遊牧民にとって、衣食住に欠かせない「ヒツジ」や「ヤギ」は財産そのもの、そして大切な家族です。豊かな暮らし、子孫繁栄を願うモチーフとして愛されています。また、「シカ」の親は子どもに寄り添って子育てすることから、子どもへの愛情や健康を意味し、家庭円満のモチーフとされています。

家財道具などの荷物を運ぶラクダは冨や成功の象徴として描かれます。

鳥 幸せをもたらす

幸せをもたらす
魚 自由の象徴

自由の象徴

鳥は幸せを運んでくれる動物。クジャクも同じく幸せの象徴であり、美しさを表す憧れの存在です。少し珍しい魚の文様は、どこへでも泳いで行ける自由さや幸運の象徴として用いられます。

植物(花、木)

生命の木 長寿、健康、子供の成長
生命の木
生命の木
生命の木
長寿、健康、子供の成長
花  美しさの象徴

美しさの象徴

大地に根を張り、天に向かって成長する「木」は生命を象徴するモチーフです。家族の健康や子どもの成長を願うものです。乾燥した大地でも高く成長する糸杉やザクロの木がモデルになっていると言われています。また、同じ生命の木でも表現は織り手によって様々。単純化されたかわいらしいものから、枝ぶりまで詳細に表現されたギャッベもあります。

「花」は、美の象徴であり、おだやかな生活への憧れや自然に感謝する気持ちを表します。

幾何学模様

さまざまな幾何学模様がありますが、特徴的なのは魔除けの文様です。「X」を並べた模様は永遠に続くものを表しているといわれています。横向きの「S」字形は、現地ではケルマックと呼ばれるモチーフで、小さな虫を模したもの。魔除けの意味合いがあります。

「ひし形」はメダリオンといい、目を表す魔除けのモチーフです。トライバルラグに織り込まれるメダリオンは部族を示す紋章のようなもので、部族ごとにデザインが異なるのが特徴です。

時おりこういった魔除けの文様が隙間なく織り込まれているものがありますが、絨毯の中に余白があると、そこに魔の手が入り込んでしまう…という謂れがあったからとか。目に見えない邪悪なものや、遊牧生活で脅威となる狼などの動物から身を守ってくれると考えられていました。

ジグザグ 水の流れ、魔除け
ジグザグ
水の流れ、魔除け
四角 幸せを呼ぶ窓、水をあらわす井戸
四角
幸せを呼ぶ窓、水をあらわす井戸
井戸 恵みの水
井戸
恵みの水

「ジグザグ」は川の流れ、「四角」は窓あるいは恵をもたらす井戸を意味し、いずれも幸せを呼び込むモチーフとして使われています。

ライオンギャッベ

ライオン柄のギャッベ
体にペルシャ語で「1375年」と書かれたライオンギャッベ
威厳のあるライオン

ギャッベ人気の火付け役ともいえる「ライオン」柄。ライオンのモチーフには「力強さ・たくましさ・知恵や勇気」などの意味があります。部族の長や、お父さんのために織られることが多く、古くは王様や部族長の座る場所にライオンギャッベを敷いていたと言われています。

昔はイラン高原やファールス州に生息していたライオンは、今では絶滅したと言われています。現代の織り手はライオンを見たことが無い方も多く、イマジネーションを膨らませて個性的なライオンを表現しています。人の顔のように見えるライオンは、一家の主に似せて織ることもあるそうです。

ラインギャッベについて、詳しくはこちらもご覧ください。

ライオンギャッベ -コレクションしたくなる絨毯 >>

ギャッベの取り扱いに関する注意点

天然繊維で織られているギャッベの取り扱いには、一般的な絨毯とは異なる点があります。お手入れするうえでの、注意点をまとめました。

日常のお手入れ

通常のお手入れは、軽く掃除機がけをするだけで問題ありません。また、天然素材であるウールにはもともと汚れから守るように油分を含んでいます。そのため、たいていのシミは、布で拭き掃除をすると目立たなくなり、表面の遊び毛とともに跡が消えていきます。

特別なお手入れ(クリーニング)

ウールの絨毯は汚れが付着しても、表面の繊維が徐々に削れていくことで目立たなくなる性質があります。クリーニングに出すのは、5年から10年に一度の割合でよいでしょう。その際、ギャッベの風合いが損なわれないよう、「手織り絨毯専門のクリーニング店」を利用してください。

選りすぐりのギャッベを集めた
「アートギャッベ®」

アートギャッベ

ギャッベは、織りの細かさや品質によって価格が異なります。化学染料を使い染色されたものや、機械で作られたものなど、低コストで生産された安価なものから、伝統的な手仕事で手間暇をかけて織るものまで様々です。私たちがご紹介しているアートギャッベは、人の手仕事で織られているものです。

イラン南西部の山岳地に暮らす「カシュガイ族」が手織りする特に高品質なギャッベの中でも、品質とアート性で選び抜いたものを「アートギャッベ®︎」と呼びます。

カシュガイ族をはじめとする織り手と生産に携わる人々は、自ら育てた羊の毛を刈り、草木染めと天日干しを経て、1つひとつ丁寧に時間をかけてギャッベをつくり上げています。永く愛用できる確かな品質に加えて、アートとしての魅力に溢れ、特別な価値を持つものを厳選し、「アートギャッベ®︎」としてお届けしています。

アートギャッベ 選定の様子
アートギャッベ選定の様子

「アートギャッベ®︎」の特徴

「アートギャッベ®︎」には、寒暖差の激しい山岳地で育つ上質な羊の毛が使われています。朝晩の気温差が10度以上ある山岳地帯で育った羊の毛は脂分を多く含んでいます。天然成分であるラノリンという脂分(ウールグリースとも呼ばれます)をしっかりと含む繊維は汚れに強く、なめらかで美しい質感を保ちます。その上質な羊毛は包み込まれるようなやわらかさを持ち、長期の使用に耐えられる丈夫さを兼ね揃えています。

標高2000mの山岳地で放牧される羊たち
標高2000mの山岳地で放牧される羊たち

また、織りが細やかなため毛足の隙間に、水分や埃(ほこり)が入り込みにくく、お手入れも簡単です。主に植物染料を使用しているため、使い込むほどに色の深みが増したり、風合いが育っていきます。

時代を経るほどに愛着と価値を感じていただける、世代を超えて受け継ぐことのできる絨毯です。

ギャッベ(ギャベ)&キリム専門 | アートギャッベ公式サイトはこちら
▶ 【アートギャッベ®】公式サイト
※グループサイトへ移動します

ギャッベを取り入れて
暮らしを豊かに

ギャッベの魅力は、ギャッベが織られた背景や、デザインに込められた願いが感じられる点にあるのではないでしょうか。人の手のあたたかみが感じられるからこそ、ギャッベは暮らしの道具としての魅力に溢れ、ギャッベがあることで、思わずそこに集いたくなるようなやさしい雰囲気が生まれるのかもしれません。

ボー・デコールグループでは、造り・健康・環境というコンセプトのもと、オリジナル商品の開発にも力を入れています。そこで、アートギャッベを全国でご紹介する中で耳にしたたくさんのお客様の声をもとに生まれたのが『ハグみじゅうたん®』です。より日本の暮らしに合う、子育て世代が取り入れやすい絨毯。健康や環境に配慮された安全・安心な絨毯をつくりたいという思いから生まれました。

ハグみじゅうたん® 小さなお子さまにも安心安全な絨毯
小さなお子さまのいるご家庭でも日常使いしやすい絨毯
ハグみじゅうたん®

ギャッベの持つ手仕事の良さやアート性を取り入れて、日本の暮らし・日本人の感性にも合う、より日常使いしやすい絨毯をバリエーション豊かに取り揃えています。お子さまのいらっしゃるご家庭でも安心してお使いいただける、自然素材のみを使用した快適な使い心地の『ハグみじゅうたん®』をぜひお試しください。

天然素材の手仕事じゅうたん ハグみじゅうたん®
ボー・デコールオンラインで購入できる
ハグみじゅうたん®はこちら

その他のハグみじゅうたんはこちら
▶ 【ハグみじゅうたん®】公式サイト
ハグみじゅうたん 公式サイト
※グループサイトへ移動します

ボー・デコールの天然素材インテリア
ボーデコールの天然素材ラグ一覧

ボー・デコールのリネンカーテン

ボー・デコールオンラインとは

1999年から「造り」「健康」「環境」をコンセプトに、全国の皆さまに永く使える上質な天然素材のインテリアを発信し続けているLOHASなインテリアショップです。オリジナルブランドの開発も手掛け、ウールラグ『ハグみじゅうたん®』リネンカーテン『Lif/Lin(リフリン)』リネンとコットンの雑貨『8à(ハチア)』を展開。全国のインテリアショップ、デパートなど258社に提供しているロハスインテリア商材の総合開発会社でもあります。オンラインショップでは、自社開発のオリジナル商品とコンセプトに添った厳選したアイテムをセレクト。手仕事で造られた永く愛用できる天然素材インテリアを、少しでもお求めやすい価格で提案しています。


インテリアショップ ボー・デコール